カテゴリー:特集
2015.06.24
内燃機関で動く自動車を発明したのはドイツ人だが、そこに移動の自由を見出して、モビリティという概念を育てたのはフランス人だ。そんな言い方をド イツで聞いたことがある。実際、電車やバスといった公共交通にはない、個人の移動をクルマは生み出した。さらに、アメリカ大陸でヘンリー・フォードがT型 フォードの開発に成功して以降、モータリゼーションが浸透していくと、人々は移動の自由を享受し、クルマでの移動は様々なライフスタイルを生んだ。
ク ルマが浸透した現代では、モビリティの多様性が求められ始めている。そのひとつが、トヨタ自動車が発表した「i-ROAD」に焦点を当て、超小型EVが起 こしつつある変化を見てみよう。トヨタ自動車は、2014年の春、首都圏を中心に10台の「i-ROAD」を一般の人に貸し出し、超小型EVそのものの可 能性についてモニター調査を実施した。
バイク並みに幅が狭く、町中でもスイスイ走れる。駐車スペースを探しやすい。前の左右輪が上下に互 い違いに動いてバイクのように傾いて車両を安定させる新開発のアクティブリーン機構の助けもあって、安定して走らせることができるが、3輪で道路に接地し ているため、バイクと比べると安定していて、コントロールしやすい、ルーフがあるので雨は防げるなど、バイクにはない便利さも見逃せない。EV特有の低い 速度域からも力を発揮する、駆け抜ける楽しさ、ヘルメットなしで外の空気を肌で感じて走る軽快さは残されているが、30km/hで走行した場合、一回の充 電で走れる距離は約50kmと、街中での短い移動であれば十分な走行距離が確保されている。もちろん、テールエンドから排出されるCO2はゼロだ。
これらの調査結果では、「出かけることが気軽になった」、「従来の交通では行きにくい地域に足を伸ばした」など行動の変化が見られた。
ま た、フランスの南東に位置するグルノーブル市でも「i-ROAD」を活用した実証試験を実施している。山間にある歴史ある古都であり、大学や研究機関が多 いことでも知られるこの町に、「i-ROAD」を35台、「COMS」を35台、あわせて70台の超小型EVを提供している。この実証試験で目指すのは、 人口増加により高まった移動ニーズへの対応であり、「基幹交通の間をつなぐ手段や末端交通での移動手段としての超小型EVの使い方」を試している。
公共交通やクルマといった従来からのモビリティに加えて、超小型EVという新しい交通が加わって移動手段が多様化することで、渋滞の緩和や低炭素社会へのシフトが期待されている。
SMC2015では、そんな自由な移動と、地球にも優しいスマートな新しい街づくりを可能とする次世代のモビリティをお見せするだけでなく、体験試乗も計画している。ぜひ東京モーターショーの会場に出現する仮想の未来都市で、その可能性を感じて欲しい。